ひきこもりから、社会にあそぶ

常識を壊して、常識にあそぶ、常識を創る

ほとほと間のあわぬ日

 2日前、休日の朝寝。カーテンを開ければからりと快晴、予報外。朝の一服で覚悟を決める。よし、谷川岳登ろう、と。起床から5分のこと。バスの時刻を検索し、水上駅までの時刻を概算し、5分で準備、出立。自らの決断に、驚く。確かに、谷川岳登山は、夢に見てはいたが…。

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 歩いて沁みる、夏の暑さ。少し早足、心は静かに、歩み進める、武蔵の心。切ないかな、バスの尻が遠のく。30秒遅かった。

 心を返し、水上駅で、ブランチ探し。生どら焼きと、上州麦豚の肉巻きおにぎりを購入。思いがけぬ出会いに喜びに満ち足りながら、またもや、バスの尻が…。なんでやねん!快活にツッコんだ。性急に、軽く決めた事柄ゆえか、谷川岳は諦めた。

 水上駅に入り、時刻表を眺める。あと2分で高崎行き出発。次の列車は、上り下りともに、1時間の待ち。これだ!と乗りこむ。

 ガタンゴトン、ガタンゴトン。音鉄ならば、キハの音色に酔いしれるのだろうが、お生憎様、準乗り鉄です。

 さて、どこへいこうか?不安は軽く、期待は強い。行くも行くとて、行き場がなれば、行けやしない。スマホ様様、NTT様様の、電波様様に御厄介。心を鎮め、欲求を探り、現状の財産と、体力とを計算する。明日香の宮かな。角川春樹氏が宮司を務め、なにやら、地震を抑え、鎮護国家に貢献するという、現代の東寺。

 角川春樹氏には、重大な興味がある。僕の欲の一つに、形而上学の探究、という重大で、壮大で、最も身近なテーマがある。形而上学の実相、語れぬのなら、体験するのみ。神秘体験が、神秘現象を意味せずとも、これしか手がかりがない。計測機器の発達はまだ先だしね。

 なに、待合1時間半だと。困った、途中下車は渋川駅か。スクロール、スクロール、5分、10分、15分。渋川八幡だな。

 ここの宮司は、神道の現在地を知る際に、学ばせてもらった、小野善一郎氏。大祓祝詞を、人間生活の基礎として、祓って祓って祓いまくり、霊魂のもつ自由闊達な、明るい輝きのままに、日々を過ごすことを推奨されている、覇気ある御仁だ。僕も、水行は小学生の頃から、それと知らずに行い続けている。特に最近は、神道に由来する神秘体験が重なり、興味津々、注意益々といったところだ。

 予定も定まり、安心して客車に振りまわされる。柔らかすぎる座席に、騒音公害で訴えれるほどの律動的な走行音、ゆったりとはしる車窓奥の風景。旅らしさ、JRに洗脳された印象に、しばし耽る。時は何処、渋川駅へのアナウンス。

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 降り立てば、鈴の音。軽やかに、風鈴が舞っている。心憎い演出、旅立ちを飾らんとする、その心遣い。一消費者が、リピーターに化ける瞬間。とらえたぞ、と独りごちる。

 経行、水の如く。疾く歩む。

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 中途休憩。橋の辺でブランチ。

 着、渋川八幡。

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 良い規模感だ。出雲も伊勢も巨大すぎる。あの巨大さは、ヒトラーの愛した、メガロポリスを連想させる。いかに、自然と調和的な様式美で工もうとも、あの不自然な整地面積が、どうしても、権勢と圧搾と高慢とに、注意をむけさせる。

 その点、渋川八幡宮は適当に思われる。民の要請、為政者の配慮と篤信。そんな想いに遊ばせる。

 また、霊石霊木、縄文より継ぐ、アニミズムの残り香、未だに香るとは。驚いた。

 などと書きながら、その実、僕の神社での体験的価値のほとんどは、手軽な森林浴でしかない。歴史的文化的価値は、事前の資料読みで満足し、いざ行けば、歴史も忘れ、比較文化的優位性には、めくらとなり、唯、ほっつき歩いて、きもちええなぁ〜って帰る。

 願掛けもしない。いつからか、できなくなった。故に拝んでいながら、拝んでいない。気分のいい時は、形を忘れて、ヘニョヘニョ、ふわふわで形をうつ。

 神社に行くのは、好きなのだけれど、神社に行ってなにをしているのか、と問われると、なんと言えばいいのか、言葉につまる。なにをしてんだろ?

 そんな適当で、よくわからない、参拝もどきを終えて、吾妻線大前駅に向かう。

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 うとうと、うとうとうとっと、うとうと。目覚めてみれば大前駅。まだ、雨は来ないようだ。曇りつつも全天、所々蒼し。西日に、輝かされる川面、これは吾妻川。善哉、善哉、たべたいな。お手を拝借、地図を参照。モクテキチマデ、センヨンヒャクメートルデス。

 疲れた。無心で歩き続け、通り過ぎ、引き返し、歩き回り、見つからず、途方に暮れ、雨が降る。

 たばこゆらゆら、のめのめ煙。結構きた。失った覚えのない、喪失感。停滞し、淀み、行為の動機を失って、ベンチに根を張る、心。

 ヤケ缶コーヒー、マズイ。ヤケタバコ、マズイ。心からは腐臭、体は抗重力から垂重力へ、姿勢維持困難、抵抗電位刻々漸進低減。やめて、ライフはもうゼロよ!あぁ〜、あ〜、あぁ〜。

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 少し、瞑想する。確かに、この度の小旅行は、間が合わなかった。がしかし、そのお陰で余白の時間を、自らがなにをしたいのかと、問うことに集中できた。

 目的地につけぬという体験が、この目的はほんとうに価値があるのか、また、あるとしたなら、いかなる経路があるのか。そして、自らの力の傾斜は、いかなる経路を通りやすいのか。目的、経路、力とその属性、三要素に分析し、予定していた体験が想定する、目的意識の演繹。目的たらしめる、欲求の細心の観察、欲求が自然に含む主体意識と、その性質に対する自己理解、示される地平の苦楽の測定。

 目的を果たせなかったが故に、自己理解の必要性が生まれた。認識された自己理解は膨大で、ここに書き記すのは、ふさわしくない。いゃー、良い1日だった。期待はずれの効用、悪くないね。