ひきこもりから、社会にあそぶ

常識を壊して、常識にあそぶ、常識を創る

誕生日、孤独、命の使い途

 今年も淋しくすごす生まれ日。家族より祝われることを屈辱と、駅に逃げて電車を眺め飽きた日。お陰を期待しない巡礼に、意義を見失っても尚、それしかすることのない虚しさを引きずりながら、歩歩是道場を忘れて、歩みを進めつづけた日。

 

 思い返すに、ろくな過ごし方をしていないな。

 幾たびも、今年こそは淋しくあることを、超剋する、受容すると決意したのでけれども、慢心が修行の邪魔をしたか、散漫な心が鍛錬を厭うたか、今年も落ち込み、さがる日。

 

 面はあげられている。足も動く。ただ、尾をひかれる様はあいも変わらず。

 

 動く手足の使い道をもとめて、行き先を考える。

 天保山観覧車で孤独を深く味わうか、行きなれた神戸大橋下の公園で、孤独をさらに味わうか、西成の合わぬ風の中で、より孤独を味わうか。

 孤独を深めることしか、頭に浮かばない。これでは、来年もまた同じことを繰り返すというのに。

 

 そういえば、引きこもりの時分、さらなる孤独の魅惑に拐かされて、花見に遊んだっけか。あの頃と指向性、変わっていないんだなぁ。

 

 もう孤独を深める必要はない。無常に淋しさを重ねる遊びは、もう飽きた。

 

 これからは、むすびむすばれて、あいあわすことを知りたい。その可能性の地平を開拓したい。

 性。まず浮かび、知りたいこと。モテないぼくには、自由恋愛はまだ遠い。経済活動としての疑似恋愛。ここから始めるよりほかはない。

 と、ここに気づき至って数時間。一歩も動けずにいる。頭だけはよく動く。上下左右にふり乱しながら、悶々と。嫌悪で肉がよく動くこと。

 「あらゆるダイエットに失敗した人たちへ、必見!動かない、しゃべらない、座るんダイエット」

 商品化検討、5秒で諦める。

 

 売女は醜い。文学より無批判に取り込んだ価値観。これは覆した。性文化の担い手たちを知り、現代の住宅、社会、貨幣制度、教育制度が想定し忘れた、人間存在の曖昧さ、もろさより生まれる、喪失と欠落感、それらをカバーする役割を合法、非合法にもち、受けとめるニーズの強い職業。

 念押しに、学びに学んで考えたことを、直接に体験するために、売専を生業と画策し、結果雇われはしなかったが、熱意をもって、偏見の是正に努めた。

 けれども、だめだ。彼女たち、スマホの画面より魅惑をせんと、整形、化粧、美容、衣装、撮影技術を駆使されて華やかに形どられている彼女らをみると、胃はよじれ、頚椎は傾き、正中は歪にくずれる。

 外聞、外見より、それらを成り立たせる内なる運動、その可能性に、耳目を集中してきたかつてのあり方は、自然と内蔵されたる念いと感性とに着目して、彼女たちの内なる可能性を連想させる。依存、承認、自己顕示、他人より奪うか、誇示するか。

 あくまで連想された可能性に過ぎないのだけれど、彼女たちにとなりに座られて、あろうことか、身体を弄られるとおもうと、怖気がする。きもちわるい、とそう感じてしまう。

 

 困ったね、何もできないや。性欲が所以か、どうにもならないこの現状で、もがきたがる不思議。

 

 けれども、彼女たちのことは知らねばならん。人間の形成の成り立ち、発展の地平に意いを凝らす自分としては、現代の性文化の、その基底、これからの展開は是非にも知りたいこと。かつ、ぼくは躰で感じ味わわないと収まらない質。

 行かねば、彼女らのもとへ。必ず行く。苦痛と恥辱が確約されていても。必ず後悔すると分かっていても。知らねば。知りたい。

 4時間、5時間、そのぐらい経ったのかな。疲れて眠る。必ず行くと。

 夢すらみない泥眠。寝過ごした。もういいや。座禅を組む信貴山での朝。